アップデイトダンス「白痴」―どんなムイシュキンが現れるのか

荻窪駅近くのカラス・アパラタスにて21日から、勅使川原三郎主催の「KARAS」によるアップデイトダンス「白痴」が上演されているのをご存知でしょうか?

ダンス「白痴」2

原作であるドストエフスキーの『白痴』に関しては、以前記事を書かせていただきました。私はこれから鑑賞するのですが、あの溢れんばかりの愛憎がどう表現されるのかとても楽しみです。激していながら終始どこか静謐さを漂わせるあの作品は、考えてみるとたしかに、率直にすぎる「言葉」というもののないダンス向きであるのかもしれません……やはり非常に困難な試みであるためか、勅使川さんがこの作品へ寄せられたコメントも静かな気迫を湛えていて、観に行くこちらまで身が引き締まる思いがします。

ごく個人的なことを言ってしまえば、つい先日友人に借りていた山岸凉子先生の『テレプシコーラ』を読み終えて(そのうち感想を書きたいと思います)バレエ・ダンスに対する関心が高まっているところにこの公演の知らせが舞い込んだので、すこし不思議な気持ちです。なんというか、巡り合わせだなあと……。公式ブログを遡ってみると、5月には「春と修羅」のダンス化もされていたようで、見逃してしまったことが心底悔やまれます。

1週間とすこしという短期間の公演ですが、チケットのお値段も比較的お手頃なことですし、『白痴』がお好きな方や身体芸術に興味がおありの方はぜひ一度足を運ばれてみてはいかがでしょう?

『カードキャプターさくら』クリアカード編&新アニメプロジェクト始動!!

『なかよし60周年記念版』刊行開始アニメ再放送開始に続き、3回目の『カードキャプターさくら』関係の記事となります。いい加減お叱りを受けるかな……? とびくびくしつつも、勢いで書いてしまいました。

なかよし 2016年7月号 / 講談社
なかよし 2016年7月号 / 講談社

先の3日に発売された『なかよし 7月号』より、『カードキャプターさくら』「クリアカード編」の連載が開始、さらに新アニメプロジェクトの始動も告知されました!!

いきなり続編が載ることになるので、『カードキャプターさくら』を知らない子も多いであろう今の読者はポカンとしてしまわないかな? とすこし不安を感じていましたが、そこはさすがの配慮で、丸2ページが「クロウカード編(旧版コミック1~6巻)」「さくらカード編(旧版コミック7~12巻)」のあらすじ紹介に割かれていました。やはりそれだけでは拾いきれないエピソードもたくさんありますが、今ならちょうど(おそらく意図して合わせたのでしょうが)アニメの再放送もしていますし、せっかく子供時代にさくらちゃんに出会えたのだから、さくらちゃんワールドを目一杯楽しんでほしいですね。

ページ下のコメント投稿欄に、予告の絵がきれいでどきどきして待っていたという小学生から続編を楽しみにしていたという高校生まで、さまざまな年齢の子たちからのメッセージが届いていて、こみ上げてくるものがありました。今、わたしや友人がさくらちゃんと共に過ごした小学生時代は遠ざかり、いろいろなものが移り変わったこの時代になって、十何歳も年下の子達と、さくらちゃんのお話ができる。あと10年もすれば、20歳前後になったその子達と、〈幼い頃に出会った〉さくらちゃんについて語り合うこともできるでしょう。今までにこの作品がきっかけで仲良くなったお友だちや、これからさくらちゃんが巡りあわせてくれるかもしれない子たちに思いを馳せて、『カードキャプターさくら』に出会えた幸せをあらためて噛みしめています。大好きな作品に、共に喜び悲しみ笑った登場人物たちに、長い年月を経て「久しぶり」と微笑みかけられるのは、ほんとうに幸せなことですね……。

当店では、『カードキャプターさくら』の関連書籍・DVDの買い取り大歓迎です。出張買取も承りますので、お気軽にお問い合わせください

王寺ミチル三部作―愛の国に生きた人間の一代記

最近読んだ小説の中でもっとも印象深かったのが、中山可穂の「王寺ミチル三部作」です。1993年に一作目『猫背の王子』、1995年に続編『天使の骨』が出版され、2016年1月の三作目『愛の国』の発表をもって完結を迎えています。

1年ほど前からタイトルに惹かれて(だって、〈猫背の王子〉に〈天使の骨〉ですよ!! )頭の中の「読みたい本リスト」に名を記してはいたのですが、その時点ではまだ完結していなかったので、もう桜庭一樹の『GOSICK』のときのような思い(出版社が変わった関係で、7巻が出るまでに数年かかり、途中からリアルタイムで追っていたわたしはたいへんな飢えを味あわされました)はごめんだ……!! と足踏みしていたところ、完結の報が舞い込み、喜び勇んで購入、3冊一気に読んでしまいました。

猫背の王子 / 中山可穂 / 集英社 / 2000 他2冊
猫背の王子 / 中山可穂 / 集英社 / 2000 他2冊

この三部作を通して、読者は「演劇の神に一生を捧げた」劇作家にして演出家、そして「永遠の少年」と評される役者、王寺ミチルの魂の遍歴を辿ってゆくことになります。一作目『猫背の王子』では、性愛観や人間関係といった王子ミチルを構成するものが「彼女のすべて」である演劇を軸として提示されてゆき、二作目『天使の骨』においては、前作のラストでおよそ持てるすべてを失ったミチルの自らを見つめなおす旅路が描かれ、その道中で彼女は「この人のために劇を書きたい」と唯一思える役者に巡り逢う。そして、三作目『愛の国』。同性愛が禁忌とされた世界で、真性のレズビアンにして、現実の理不尽への根っからの反骨精神をもつ天性の役者であるミチルの戦いが描かれます。

三作すべて、独立した作品としてもすばらしい完成度を誇ってはいますが(そもそもはじめは三部作にする予定はなかったようですし)、中でも最終巻となった『愛の国』のそれには凄まじいものがあります。『愛の国』後半でミチルは、同性愛者を迫害しカリスマ的な存在である彼女の排除を目論む「愛国党」から逃れるため、またとある愛の結末を見届けるためにスペインの聖地を巡礼するのですが、描きだされたその道程の美しいことといったらありません。過酷・残酷な現実のなかで、「舞台で魔法を使い過ぎた者は、現実の人生で復讐されるんだ」、「ねえミチルさん、あなたは愛の国に住んでいるの? 」というような台詞や、空中に吊るされて踊るタンゴ、背の傷跡に閉じ込められた愛する人の骨、巡礼のなか繰りかえし現れる幻影といったイメージが、散りばめられた宝石のように輝きを放つような、この小説そのものがミチルによる天上の芝居であるかのような作品なのです。

当店では、恋愛小説や文庫本の買い取り大歓迎です。出張買取も承りますので、お気軽にお問い合わせください

セルジュ・マーシェニコフ―繊細な筆致、慈しみに満ちたまなざし

突然ですが、わたしは芸術作品に一目惚れをすることの多い人間です。とんでもなく好みな絵や写真をみつけてしまったが最後、画集や写真集を必死になって探しだし(作者が海外の方だと意外と大変なんですよね……)、お財布の危機もなんのその、一直線に向かうはレジ。今回紹介させていただくSergey Marshennikov(セルジュ・マーシェニコフ)についても、そのお決まりの流れを辿りました。

セルジュ・マーシェニコフは、ロシアのウファ出身の画家であり、1971年生まれで現在も精力的に活動なさっている方ですが、まるでルネサンス期のもののような品のある絵を描かれます。彼の作品のほとんどは(もしかするとすべてなのかもしれません)裸、あるいは薄布やゆったりとした衣服をまとった少女や若い女性を描いたもの。眠っている姿が描かれることも多く、慈しみが滲みでるような筆致や彼女たちの安らいだ寝顔は、以前リヒテンシュタイン展の記事で紹介させていただいた、フリードリヒ・フォン・アメリングの「マリー・フランツィスカ・リヒテンシュタイン侯女2歳の肖像」をどことなく彷彿とさせます(一目惚れの連鎖……)。

Art Masters 97 Sergey Marshennikov / Dirk Stursberg / Createspace / 2014
Art Masters 97 Sergey Marshennikov / Dirk Stursberg / Createspace / 2014

彼の画はネット上で閲覧できるものも多くありますが(TumblrInstagram)、これはぜひとも紙媒体で手元に置いておきたい、と画集を探していてみつけたのが、写真の『Art Masters 97 Sergey Marshennikov』。どうやら1冊ごとに1人の画家の作品を特集していくシリーズであるらしく、解説や作者略歴などに割かれているページがほぼないため、見た目の薄さに反して内容にはかなりのボリュームがあります。お値段も控えめなので、わたしのような一目惚れ衝動に抗えないタイプにとってはとてもありがたい1冊。

ゆっくりページを捲りつつ、美しいものが手元にあると、それだけで幸福で満たされるなあ、としみじみ思う今日この頃です。

当店では、画集・写真集の買い取り大歓迎です。出張買取も承りますので、お気軽にお問い合わせください

アニメ『カードキャプターさくら』再放送開始!!

4月6日より、BSプレミアムにて毎週水曜日18:00~アニメ『カードキャプターさくら』の再放送が始まりました!!

かなり前の記事でも一度触れた、「なかよし60周年記念企画」によって引き起こされているカードキャプターさくらリバイバル。長らく入手困難となっていた『クロウカードセット』が復刻され、『カードキャプターさくら』の連載開始20周年が重なったことにより原作者CLAMP先生による自選イラスト集も発売、ついにはTwitterに「カードキャプターさくら」公式アカウントまで開設されるという驚きの展開に!! まさか、2016年になってこんなことが起こるとは……。さらに、噂によると近々『なかよし』本誌に描き下ろしの読み切りが掲載されるとのことで、長年のファンとして感極まっております。

カードキャプターさくら 連載開始20周年記念 イラスト集 / CLAMP / 講談社 / 2016
カードキャプターさくら 連載開始20周年記念 イラスト集 / CLAMP / 講談社 / 2016

ちなみに、現在アニメイトカフェさんにて「カードキャプターさくらカフェ」が開催されていて、そちらでは熾烈なチケット争奪戦が起こっています。わたしは運良く席をとることができたので、さくらファンの友人と近日中に行ってまいります!! 私事で恐縮ですが、あまりに楽しみで浮かれているのでつい書いてしまいました……。カフェの感想でもうひとつ記事を書きかねない勢いです。さすがに自重しますよ!!

『カードキャプターさくら』は、「魔法少女もの」のエンターテイメント性を有しているのと同時に、いろいろな形の「愛」あるいは「恋」を描き出した作品でもあります(アニメ版ではやや控えめな描写になっていたりもするので、ぜひ原作を読んでいただきたいところ)。これは『セーラームーン』にもいえることで、今の20代、いわゆる「セーラームーン世代」および「カードキャプターさくら世代」にLGBTその他さまざまな性的マイノリティを〈あたりまえにそこにあるもの〉として自然に受け入れている人が(比較的、ではありますが)多いのはこの2作品の影響が強いのではないかとネットの一部でいわれているほど。再放送によって生まれるであろう新たな「カードキャプターさくら世代」の子達が、ストーリーを楽しみキャラクターに憧れながら、同じようにそのメッセージを受け取って、大人になってもその温かな態度を忘れることのないように祈りたいと思います。

当店では、『カードキャプターさくら』や『美少女戦士セーラームーン』といった名作少女漫画やその関連書籍の買い取り大歓迎です。原作コミックをお出しになる際は、ぜひ全巻セットで!! 出張買取も行っていますので、お気軽にお問い合わせください