『三国志』

三国志は映像化されたり、ゲームになったり、今も昔も人気ですよね。その中でも定番といったらやはり横山光輝の漫画と吉川英治の小説だと思います。

店員Sが子供の頃にも読んでいる友達がいました。吉川英治の漫画は全60巻あるので持っていた友達を羨ましく思ったものです。今でもなかなかいいお値段ですしね(笑)。それでも借りて読んだり、当時NHKで放送していた人形劇を見たり、コーエーのゲームで武将の名前などを覚えました。ただ知らない登場人物もまだまだいますし、知らない話がたくさんあるので、いろいろな方向から書かれた三国志関連本を読むのは楽しそうですね。

三国志 全60巻 / 横山光輝 / 潮出版社
三国志 全60巻 / 横山光輝 / 潮出版社
新装版 三国志 全5巻 / 吉川英治 / 講談社文庫
新装版 三国志 全5巻 / 吉川英治 / 講談社文庫

幕張店では、三国志以外にも漫画や小説をいろいろ取り扱っております。ぜひご来店くださいませ。

現在を記録する―今和次郎・吉田謙吉『モデルノロジオ』『考現学採集』

私が去年書いたブログに、路上観察学について書いたものがありました(ちくま文庫『路上観察学入門』に見る林丈二氏の飽くなき好奇心)。その中では路上観察学についてや林丈二氏の「癖」もしくは「業」としかいいようのない記録・採集の一部を紹介いたしましたが、実は路上観察学には嚆矢、始祖、母体、元祖ともいえる学問が大正、昭和初期にすでに存在したのです。今和次郎氏が提唱した「考現学」がそれです。

考現学は、時間的には考古学と対立し、空間的には民俗学と対立するものであって、もっぱら現代の文化人の生活を対象として研究せんとするものである。

藤森照信編、今和次郎著『考現学入門』

リアルタイムに今現在の生活・風俗を記録・採集していく学問、考現学。民俗学者・柳田国男氏に師事していた今氏は考現学研究のために破門されたとも言われています(が、それは今氏の冗談ではないかとの説もあります)。そして1930年(昭和5年)、関東大震災後のバラック街のスケッチ等の活動をしていた吉田謙吉氏と共に『モデルノロジオ 考現学』を上梓します。

今和次郎・吉田謙吉編著『考現学 モデルノロジオ』。左は1986年の学陽書房版(復刻版)。右は昭和5年発行の春陽堂版(オリジナル)。
今和次郎・吉田謙吉編著『モデルノロジオ 考現学』。左は1986年の学陽書房版(復刻版)。右は1930年発行の春陽堂版(オリジナル)。

それでは考現学の一大金字塔『モデルノロジオ 考現学』を紐解いてみましょう。

今和次郎・吉田謙吉編著『考現学 モデルノロジオ』より今和次郎「女の風俗」
今和次郎・吉田謙吉編著『モデルノロジオ 考現学』より「女の風俗」

上図は1925年初夏における、銀座の街行く女性の身なりについて統計を取ったものです。髪型、化粧の具合、メガネの有無など。その他にも靴、着物、洋服の襟の種類、持ち物まで子細に調べてあります。本文に“全然素顔の人は極くわずかだということになりました”とあります。やはり銀座を歩くとなれば、当時の女性も気合を入れて化粧をしたのでしょうか。

今和次郎・吉田謙吉編著『考現学 モデルノロジオ』より「手拭の巻き方、冠り方、引つかけ方」
今和次郎・吉田謙吉編著『モデルノロジオ 考現学』より「手拭の巻き方、冠り方、引つかけ方」

続いては当時の下町にみられる職人さんの身なりを図にしたものです。資料性を持ちながら、味わいのある魅力的な吉田謙吉氏の図。子供の頃に見た図鑑などもそうですが、資料図って見ているだけでワクワクしてきます。

今和次郎・吉田謙吉編著『考現学 モデルノロジオ』より「露台利用者の休息状態」
今和次郎・吉田謙吉編著『モデルノロジオ 考現学』より「露台利用者の休息状態」

こちらは1927年、上野公園で横になって休んでいる人の寝姿いろいろ。人の寝姿というのはよっぽど考現学者の記録意欲をそそるのか、同書には「丸ビル紳士いねむり状態」も掲載(下図)。

今和次郎・吉田謙吉編著『考現学 モデルノロジオ』より「ゐねむりとヒル寝」
今和次郎・吉田謙吉編著『モデルノロジオ 考現学』より「ゐねむりとヒル寝」

やはり生理現象、寝姿は今も昔も変わらないようです。こんなお父さん方を公園で見かけることもありますよね。

今和次郎・吉田謙吉編著『考現学 モデルノロジオ』より「丸ビル モガ 散歩コース」
今和次郎・吉田謙吉編著『モデルノロジオ 考現学』より「丸ビル モガ 散歩コース」

上図は丸ビルをブラブラするモダンガールの散歩コースを記したもの。これは女性のあとをつけて記録しているわけで、立派な「尾行」です。2000年にストーカー規制法が施行される70年以上前。「おおらかな時代だった」という免罪符は強いなあと思います。

今和次郎・吉田謙吉編著『考現学 モデルノロジオ』より「煙草の吸殻収集報告」
今和次郎・吉田謙吉編著『モデルノロジオ 考現学』より「煙草の吸殻収集報告」

ブログで紹介するにあたってキャッチーだと思ったので、人間を対象とした研究を挙げてきましたが、当然ながら人間だけでなく物も考現学研究の対象です。こちらは昭和3年横浜駅から桜木町駅を1時間歩きながら拾ったタバコの吸殻。路上清掃ではなく、記録・採集です。本文中にある“右側歩道で拾い集めた吸殻総数は187本、左側歩道上で数え上げた数字は1276本”という、左右でカウントを分けているところに研究者としての深い業を感じます。

吉田謙吉編著『考現学採集』、学陽書房による1986年復刻版。
今和次郎・吉田謙吉編著『考現学採集』、学陽書房による1986年復刻版。

『モデルノロジオ 考現学』を上梓したその翌年1931年に今・吉田両氏は『考現学採集』を上梓、考現学の研究・発表を続けます。

吉田謙吉編著『考現学採集』より「恋愛考現学」
今和次郎・吉田謙吉編著『考現学採集』より「恋愛考現学」

『考現学採集』より、こちらはラブレター、本書的に言うならば“恋愛的通信”の保存場所あれこれです。“20才くらいの妹と住んでるので差し当り壁にかけてある額の裏におき”や“破いて棄てるのが常”など、保存場所ひとつで人間ドラマが目に浮かぶようで何とも興味を惹かれます。

吉田謙吉編著『考現学採集』より「東京某暗黒街分析」
今和次郎・吉田謙吉編著『考現学採集』より「東京某暗黒街分析」

上図は当時の風俗街にみられた広告看板や注意書きなど。ほかにもいわゆる「覗き部屋」の覗き窓の形状の種類を記録したものもあります。こういう艶っぽいものは対象としてそそられるのは当然でしょう。先ほどのモダンガールの散歩コースもそうですが、その他には街行く女性の脚線を記録したり(“靴下の皺ナシ脚線は30人中たった二人”など、ものすごく細かく観察している)、スカートの長さの研究など、女性に対する研究に熱を上げているところもあり、一歩間違えれば……と考えてしまいます。

今手元にある『考現学採集』は復刻版ということで、追加収録されているご存知林丈二氏の寄稿の一部を最後にご紹介しましょう。

吉田謙吉編著『考現学採集』より
今和次郎・吉田謙吉編著『考現学採集』より「ホテル考現学ヨーロッパ編」

やっぱりイラストレーターだけあって、見やすく可愛らしい絵です。1980年代に林氏が利用したヨーロッパのホテルのトイレの様子や、鍵の形状などの記録。林氏の魅力を再確認させられました。

以上、『モデルノロジオ 考現学』『考現学採集』の2冊を使って、魅力的な考現学の世界の一部をご紹介させていただきました。日々の営みの些細なことが考現学の素であり、自分の生活を見つめなおすことは考現学の第一歩です。家計簿の中には立派な我が家の考現学が詰まっています。皆さんの暮らしが小さな発見で満たされ、面白い毎日でありますよう。

当店では、人文科学やサブカル、その他書籍いろいろと買取りを承ります。どうぞお気軽にご相談、お問合せください。お待ちしております!

『カードキャプターさくら』クリアカード編&新アニメプロジェクト始動!!

『なかよし60周年記念版』刊行開始アニメ再放送開始に続き、3回目の『カードキャプターさくら』関係の記事となります。いい加減お叱りを受けるかな……? とびくびくしつつも、勢いで書いてしまいました。

なかよし 2016年7月号 / 講談社
なかよし 2016年7月号 / 講談社

先の3日に発売された『なかよし 7月号』より、『カードキャプターさくら』「クリアカード編」の連載が開始、さらに新アニメプロジェクトの始動も告知されました!!

いきなり続編が載ることになるので、『カードキャプターさくら』を知らない子も多いであろう今の読者はポカンとしてしまわないかな? とすこし不安を感じていましたが、そこはさすがの配慮で、丸2ページが「クロウカード編(旧版コミック1~6巻)」「さくらカード編(旧版コミック7~12巻)」のあらすじ紹介に割かれていました。やはりそれだけでは拾いきれないエピソードもたくさんありますが、今ならちょうど(おそらく意図して合わせたのでしょうが)アニメの再放送もしていますし、せっかく子供時代にさくらちゃんに出会えたのだから、さくらちゃんワールドを目一杯楽しんでほしいですね。

ページ下のコメント投稿欄に、予告の絵がきれいでどきどきして待っていたという小学生から続編を楽しみにしていたという高校生まで、さまざまな年齢の子たちからのメッセージが届いていて、こみ上げてくるものがありました。今、わたしや友人がさくらちゃんと共に過ごした小学生時代は遠ざかり、いろいろなものが移り変わったこの時代になって、十何歳も年下の子達と、さくらちゃんのお話ができる。あと10年もすれば、20歳前後になったその子達と、〈幼い頃に出会った〉さくらちゃんについて語り合うこともできるでしょう。今までにこの作品がきっかけで仲良くなったお友だちや、これからさくらちゃんが巡りあわせてくれるかもしれない子たちに思いを馳せて、『カードキャプターさくら』に出会えた幸せをあらためて噛みしめています。大好きな作品に、共に喜び悲しみ笑った登場人物たちに、長い年月を経て「久しぶり」と微笑みかけられるのは、ほんとうに幸せなことですね……。

当店では、『カードキャプターさくら』の関連書籍・DVDの買い取り大歓迎です。出張買取も承りますので、お気軽にお問い合わせください

『入江泰吉の心象風景 古色大和路』

入江泰吉さんの没後20年の企画で出版された写真集です。お寺、仏像、自然などとても美しい写真ばかりです。東大寺など歴史あるお寺の四季を捉えていて幻想的にも感じられ、夕焼けや雪景色や靄にかすんだ風景などずっと見ていられます。そして大仏や菩薩像などもたくさん掲載されていて堪能できます。

店員Sはお寺や神社に行くのは好きなのですが、奈良は行ったことがないのでこの写真集を見て行きたいという気持ちがかなり高まってしまいました。

古色大和路2

入江泰吉の心象風景 古色大和路 / 入江泰吉 / 光村推古書院 / 2012
入江泰吉の心象風景 古色大和路 / 入江泰吉 / 光村推古書院 / 2012

当店では、写真集やカメラに関する書籍なども取り扱っております。ぜひご来店くださいませ

王寺ミチル三部作―愛の国に生きた人間の一代記

最近読んだ小説の中でもっとも印象深かったのが、中山可穂の「王寺ミチル三部作」です。1993年に一作目『猫背の王子』、1995年に続編『天使の骨』が出版され、2016年1月の三作目『愛の国』の発表をもって完結を迎えています。

1年ほど前からタイトルに惹かれて(だって、〈猫背の王子〉に〈天使の骨〉ですよ!! )頭の中の「読みたい本リスト」に名を記してはいたのですが、その時点ではまだ完結していなかったので、もう桜庭一樹の『GOSICK』のときのような思い(出版社が変わった関係で、7巻が出るまでに数年かかり、途中からリアルタイムで追っていたわたしはたいへんな飢えを味あわされました)はごめんだ……!! と足踏みしていたところ、完結の報が舞い込み、喜び勇んで購入、3冊一気に読んでしまいました。

猫背の王子 / 中山可穂 / 集英社 / 2000 他2冊
猫背の王子 / 中山可穂 / 集英社 / 2000 他2冊

この三部作を通して、読者は「演劇の神に一生を捧げた」劇作家にして演出家、そして「永遠の少年」と評される役者、王寺ミチルの魂の遍歴を辿ってゆくことになります。一作目『猫背の王子』では、性愛観や人間関係といった王子ミチルを構成するものが「彼女のすべて」である演劇を軸として提示されてゆき、二作目『天使の骨』においては、前作のラストでおよそ持てるすべてを失ったミチルの自らを見つめなおす旅路が描かれ、その道中で彼女は「この人のために劇を書きたい」と唯一思える役者に巡り逢う。そして、三作目『愛の国』。同性愛が禁忌とされた世界で、真性のレズビアンにして、現実の理不尽への根っからの反骨精神をもつ天性の役者であるミチルの戦いが描かれます。

三作すべて、独立した作品としてもすばらしい完成度を誇ってはいますが(そもそもはじめは三部作にする予定はなかったようですし)、中でも最終巻となった『愛の国』のそれには凄まじいものがあります。『愛の国』後半でミチルは、同性愛者を迫害しカリスマ的な存在である彼女の排除を目論む「愛国党」から逃れるため、またとある愛の結末を見届けるためにスペインの聖地を巡礼するのですが、描きだされたその道程の美しいことといったらありません。過酷・残酷な現実のなかで、「舞台で魔法を使い過ぎた者は、現実の人生で復讐されるんだ」、「ねえミチルさん、あなたは愛の国に住んでいるの? 」というような台詞や、空中に吊るされて踊るタンゴ、背の傷跡に閉じ込められた愛する人の骨、巡礼のなか繰りかえし現れる幻影といったイメージが、散りばめられた宝石のように輝きを放つような、この小説そのものがミチルによる天上の芝居であるかのような作品なのです。

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