野坂昭如さん、ありがとうございました。

昨日12/9の夜、『火垂るの墓』の作者として知られる作家の野坂昭如さんがお亡くなりになりました。2003年に脳梗塞で倒れられてから奥様に支えられての自宅介護が続き、右手が不自由ながら奥様による代筆で作品を発信し続けましたが、昨日自宅ベッドで意識がない状態であったのを発見され、その後病院で死亡が確認されました。85歳で旅立ってしまった。

八面六臂の大活躍で多作な野坂さんだったものですから、全ての作品に私は触れられていませんが、野坂さんの文体がとても好きでした。ワンセンテンスが長いけど、露天商の口上のような独特なリズムがあるので淀みを感じず、むしろ調子を取りながら文字を目で追うのが心地よく、それでいて内容も頭に不足なく入ってくるので、句点のあと次の長文を欲しがるように作品に没頭しました。 続きを読む 野坂昭如さん、ありがとうございました。

ちくま文庫『路上観察学入門』に見る林丈二氏の飽くなき好奇心

中高生のころにクラスの友達でよく『VOW』を回し読んでいました。街にある面白い看板や新聞・雑誌・チラシの笑える誤植などを集めて本にしたもので、今現在ネットでおもしろ画像として取り上げられるものの元ネタは、過去に『VOW』で取り上げられたものであることも少なくありません。

このようなおもしろ可笑しい看板などを取り上げていた。
このようなおもしろ可笑しい看板などを取り上げていた。

その十数年後、大人になった私は『路上観察学入門』という本に出会います。読後に「ああ、ガキの頃に回し読みしていたVOWのおもしろ看板も、一種の路上観察学だったのか」と気付きました。

ちくま文庫「路上観察学入門」。私物です。カバンの中でお茶に濡れてしまったのでシワとシミがあります……
ちくま文庫『路上観察学入門』。私物です。カバンの中でお茶に濡れてしまったのでシワとシミがあります…

赤瀬川原平藤森照信南伸坊などを中心に結成された路上観察学会が、1986年に『路上観察学入門』を上梓します。「路上観察学」とは、文字通り路上を観察し、世間一般がそれまで観察したり観賞したりする対象として意識しなかったものにクローズアップし、研究・発表するという役に立たないヒマつぶし学問です。路上観察学の研究対象として本書に挙げられているものは様々で、変わった建築物や張り紙・看板はもちろんのこと、マンホールの蓋、ドブ川に浮いているもの、解体された建築物の欠片、放し飼いにされた犬の歩きまわるコース、旅行中に見かけた犬のフン、オナラをした時の場所・時間・音の記録など、もう何でも学問にしてしまっているのです(こういった題材をあえて「学問」とすることに面白味があるわけですが)。 続きを読む ちくま文庫『路上観察学入門』に見る林丈二氏の飽くなき好奇心

“伝説の大道芸人” ギリヤーク尼ヶ崎『鬼の踊り 大道芸人の記録』

何年か前、夜更かししていた私は、目当てのTV番組もないままに深夜放送を適当にザッピングしていたが、コロコロと画面が切り替わる中でとあるドキュメンタリー番組に眼を奪われた。街頭で、白塗りをしたお爺さんが長い髪を振り乱し、着ている和服が乱れんばかりに踊り狂っている様子が画面に映しだされたのだ。ついにお爺さんはフンドシもあらわな半裸状態になり、路上に転がった。お爺さんをぐるりと取り囲む人だかりから拍手喝采が浴びせられる。それは舞踏の公演だった。私はすぐにビデオの録画ボタンを押し、録画しながらもチャンネルはそのまま、番組から眼が離せなくなった。

ギリヤーク尼ヶ崎以上が “最後の大道芸人” と称されるギリヤーク尼ヶ崎氏を、私が初めて知った時の様子。深夜の偶然の出会いで度肝を抜かれ、興味を持って調べてみると、1930年北海道の生まれで、舞踏家であったが38歳の時に大道芸に転向。以来街頭での公演を続けているとのこと。主な演目は「念仏じょんがら」「じょんがら一代」など。伊丹十三監督の映画にも俳優として出演しており、「タンポポ」では舌の肥えたグルメなホームレス集団の一人を、「マルサの女」では山崎努氏に宝くじを売りつける役を演じていたと知った時には、あの役を怪演していた人が舞踏家だったとは! とさらに驚いた。 続きを読む “伝説の大道芸人” ギリヤーク尼ヶ崎『鬼の踊り 大道芸人の記録』

テレビ絵本いろいろ、ヤフオク!出品中

草古堂では現在、テレビ絵本ヤフオク!に大量出品しております。表紙を眺めるだけで、ウルトラマンや仮面ライダー、戦隊ものに胸を踊らせたあの頃を思い出しますねえ。

テレビ絵本

そうそうオールカラーで、分厚くて固いボール紙製で、街の本屋さんの入り口近くの専用ラックに陳列されてたんですよ。ページをめくる度に展開するヒーローたちのバトル。子どもたちは、見開き2ページに所狭しと広がっている情報を全部のこさず収めようと、小さな目の玉をいっぱいに見開いていたものです。 続きを読む テレビ絵本いろいろ、ヤフオク!出品中

「三省堂古書館 初夏の古書市」レポート!

「晴耕雨読」の言葉通りであれば、読書ばかりが捗る雨続き、東京は梅雨の真っ只中です。しかし中には晴れても降っても、寝ても覚めても本の虫という諸氏もいらっしゃることでしょう。今回は必見! 三省堂書店神保町本店8階にて現在開催中の三省堂古書館 初夏の古書市の様子をお伝えいたします!

草古堂

佐藤春夫『美の世界』、串田孫一『羊飼いの時計』Web目録(PDF )にも掲載しております当店商品、佐藤春夫『美の世界』と、串田孫一の詩集『羊飼いの時計』です。『美の世界』は限定350部・署名入り! 『羊飼いの時計』も限定版です。こちらの商品はレジ横のショーケース内に陳列しておりますので、ご来場の際はぜひチェックしていただければと思います。

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