中高生のころにクラスの友達でよく『VOW』を回し読んでいました。街にある面白い看板や新聞・雑誌・チラシの笑える誤植などを集めて本にしたもので、今現在ネットでおもしろ画像として取り上げられるものの元ネタは、過去に『VOW』で取り上げられたものであることも少なくありません。
その十数年後、大人になった私は『路上観察学入門』という本に出会います。読後に「ああ、ガキの頃に回し読みしていたVOWのおもしろ看板も、一種の路上観察学だったのか」と気付きました。
赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊などを中心に結成された路上観察学会が、1986年に『路上観察学入門』を上梓します。「路上観察学」とは、文字通り路上を観察し、世間一般がそれまで観察したり観賞したりする対象として意識しなかったものにクローズアップし、研究・発表するという役に立たないヒマつぶし学問です。路上観察学の研究対象として本書に挙げられているものは様々で、変わった建築物や張り紙・看板はもちろんのこと、マンホールの蓋、ドブ川に浮いているもの、解体された建築物の欠片、放し飼いにされた犬の歩きまわるコース、旅行中に見かけた犬のフン、オナラをした時の場所・時間・音の記録など、もう何でも学問にしてしまっているのです(こういった題材をあえて「学問」とすることに面白味があるわけですが)。 続きを読む ちくま文庫『路上観察学入門』に見る林丈二氏の飽くなき好奇心