孤立はよくない、でも人付き合いに疲弊するのもよくない。半分だけ降りて、ほどよい距離でゆるく繋がれるサードプレイスを見つけることが大事だと思いました。
昔のクイックジャパンを読んでいたし、もちろん大ベストセラー「完全自殺マニュアル」の作者として鶴見さんのことを知ってはいたけれど、この本を読むまでは、鶴見さんに対して、ポップで先鋭的でいかにも90年代に売れた作家ってイメージを持っていました。
読後、まずここまでご自身のことを素直に語られていることに驚きました。家庭のことや現在のことまで、ご本人もここまで書いたのは初めてだと書かれています。
人間関係で苦しんだ果てに鶴見さんがたどり着いたのは「近すぎない、ほどよい距離でゆるくつながること」です。
人間関係は濃密であることがいいとされているところがあります。はたしてそれは本当でしょうか。本書によると、血縁至上主義は大正時代に生まれた価値観であるとのことです。近しいことが心地よければ言うことはありませんが、近ければ近いほど、憎しみも比例して増えます。
鶴見さんご自身でも、ゆるく程よい距離感でつながれる場を提供する運動をおこしています。このあたりはphaさんとも共通するムーブメントですね。サードプレイス、フォースプレイスのありがたさは私も生活の中で実際に強く感じています。
そもそも発売当時に社会問題にまでなった「完全自殺マニュアル」も、「いざとなればこの本に書いてあるように簡単に死ねる」と思うことで気持ちをラクにさせるような、ほんのり優しいメッセージが込められた本でした(90年代悪趣味カルチャーと結びついたことがイメージダウンの一端かも?)。30年の時を経て、この本とも根底では繋がっていることを感じました。
親と子は愛情で深くつながっていることが正解、若い頃に恋愛をしておくのが正解、早く童貞を捨てないと恥ずかしいなど、人間関係に正解があるかのような考えがごく自然に溢れていますが、それを一度疑ってみること。そうすれば、生きることがラクになれるヒントが見えてくるかもしれません。