新潮文庫の人気キャラクター『Yonda?パンダ』を彷彿とさせるかわいらしい表紙に惹かれて何気なく手にした本書ですが、帯の「生きることは読むことだった、あの頃」という言葉そのままに作者・はるな檸檬さんの幼少期からの読書遍歴をエッセイマンガという形をとって熱く熱く語られています。
とくに印象深いエピソードは両親共に大変な読書家だそうで、家族団らんといえばリビングに集まりつつも各々読書大会だったということ。弟くんだけはかたくなに本を読まないため「宇宙人」と表現されてます 笑。
ほんとうの読書好きのお家って自然とこうなるんだ!となぜか感動?してしまいました。一緒にテレビを観たりしゃべり合うことだけが団らんじゃないんですよね。
高楼方子さんの児童文学『時計坂の家』と出会った時のエピソードもまた興味深いです。主人公フー子が祖父の家の扉から異世界へと迷い込む……というファンタジー小説なのですが、作者はとりつかれたようにのめり込み、図書館で借りた本だったため返却しては司書さんが本棚に戻した瞬間を柱の影からじっと見守りダッシュ!でまた借り直すという荒技を十数回繰り返したという……。今考えると迷惑な行為だったと綴っていますが、ここまで夢中になれる本に出会えるというのはとても幸せですね。
購入するのは小学生の少ないお小遣いでは無理だったそうですがそれほど好きなら買ってはもらえなかったのかな……という疑問は置いておいて、一冊でも多くこんな読書体験をしてみたいものです。
ちなみにはるな檸檬さんは『海月姫』などで人気の東村アキコさんと学生時代に同じ絵画教室だったそうで、ちらっと東村先生も出てきます。東村アキコさんは今一番ハマっているといってもいい作家さんなのでお二方の意外なつながりが嬉しかったです。
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