一年ほど前、池袋のジュンク堂書店。話題の本コーナーに平積みにされていた多くの本の中、一際わたしの目を引いたのが『ピエタ』の文庫本でした。世界史の資料集で初めて見てから惹かれ続けているミケランジェロ作の像と、タイトルが同じだったからでしょうか。「ピエタ」はイタリア語で「哀れみ・慈悲」を表します。
この小説は、作曲家ヴィヴァルディに師事し、音楽と共に育った孤児の娘を主人公として、その娘に関わるさまざまな人々の人生を優しく描き出しながら進みます。文体は透き通って美しく、大きな事件などが起こるわけでもないのに読者をすっと物語に引き込んでゆくようです。ひとつひとつの言葉が丁寧に選びぬかれていて、深い余韻の残る締めといい、とても大切にしたくなる作品でした。
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