「意外とカワイイ人だな」が読後の感想でした。
極力道具を減らし、米と調味料以外の食料は現地調達し、できるだけ"ズルなし"で自然を相手にするサバイバル登山家・服部文祥さんの著作です。
内容は、実際に登山した時の模様と、道具の説明などを書いた実用的なパート、そして登山・自然に対する服部さんの考えや思想、若い頃について書いたエッセイ、といったところ。写真や図解はほぼなく、文章一本勝負ですがこれがまたグイグイと読ませる文章で、とても面白く読めました。冒険記部分ももちろん面白いですが、服部さんの思想や哲学、死生観、自分を深く見つめる時の表現が特に面白く、文章がまっすぐストンと心に落ちてくるようで、服部さんの考えにしっかりタッチできた実感があります。
この本を読む前は、服部さんは自分と他人に厳しく、正直すぎて融通がきかない、図太い神経の持ち主で、理屈っぽくてカッコつけで、孤高ゆえに人を寄せ付けない変わり者(がゆえに面白い)と思っていましたが、この本の中の服部さんはそのイメージとはやや違います。意外にもカワイイのです。カッコつけきれてない思春期男子を見ている気持ちになる場面がちらほら(笑)。
サバイバル!と言いつつ時に山中の人工物の誘惑に心揺れたり、他の登山客に対して自意識過剰だったり、カッコつけたがったり、そんな自分にツッコまずにいられなかったり…なんというか、自分の内面を正直に書いているがゆえに「そんなこと書かなけりゃ最後までカッコつけられたのに」と微笑ましいです。でも自分に正直でないと登山はできないだろうと思います。自分の体調や能力や気持ちを、虚栄心から高く見積もることは登山では命取りになるでしょう。
小難しくとっつきにくそうなオジさんと思っていましたが、憎めない可愛い人だと思いました。以前テレビ番組で服部さんが某登山家を批評した時、「登山家として3.5流」と言いつつ「彼はいい奴らしいから、会ったらほだされちゃうかも」と苦笑していましたが、服部さん自身も結構人たらしなタイプなのかもと思いました(笑)
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