これぞ少女漫画!!―売野機子作品集

少女漫画を読みたい。胸焼けしそうに甘いやつではなく、おちゃめで、すこしだけ毒があって、なおかつ深い余韻を残す少女漫画が読みたい!! ……そう思ったとき、私は本棚から『売野機子作品集』をひっぱり出すことにしています。

薔薇だって書けるよ―売野機子作品集 / 売野機子 / 白泉社 / 2010
薔薇だって書けるよ―売野機子作品集 / 売野機子 / 白泉社 / 2010

とにもかくにも印象的なやりとりやモノローグが多い。この作品集は全3巻なのですが、写真の第1巻だけ見ても、ふふっと笑ってしまうような台詞や、心に沁みわたる言葉がたくさん詰まっています。

表題作「薔薇だって書けるよ」の冒頭では、ヒロインが大量のラブレターを持ってきた相手に〈あなたヤギ(を)口説きに来たの?〉と微笑み、「遠い日のBOY」では、〈誰でもよかったのね〉という言葉に〈誰でもよかったのに/誰でもよくなくなるのさ〉という返し。「晴田の犯行」の冒頭は、〈いつか、人生の本番が来ると信じていた〉という、つい共感してしまう独白。何度読み返してみても、「天才だ……」と唸らせられます。

まだあまり有名ではない作者ですが、初長編『MAMA』の連載も2周年を迎え、じわじわと人気がでてきているようです。本はたくさん売れてほしい、でも有名になってしまうのはどこか寂しい……。ファン心理はどうにも複雑で面倒ですね。

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I'm a dreamer―なかよし60周年記念版「CCさくら」

月刊少女漫画雑誌『なかよし』が創刊60周年を迎えるということで、記念プロジェクトが次々始動していることをご存知でしょうか?

『なかよし』連載作品でヒットしたものは数多いですが、なかでも『美少女戦士セーラームーン』、そして『カードキャプターさくら』の人気は根強いものがあります。かくいう私もさくらファンのひとり!! アニメをリアルタイムで観ていた世代なので、さくらちゃんのイラストを見ると坂本真綾さんが歌っていたOP「プラチナ」の「I'm a dreamer~」という出だしが耳に蘇ってきます。

『カードキャプターさくら』は、魔力を持つカード「クロウカード」の封印を解いてしまった少女、木之本さくらが恋にカード集めに大奮闘するという物語。こう言ってしまうとどこにでもありそうなお話ですが、何気ないセリフ回しの温かさやおちゃめで優しい雰囲気がこの作品に特別な輝きを与えています。さくらの「無敵の呪文」である、「絶対だいじょうぶだよ」に勇気をもらった人も多いはず。

そんな『カードキャプターさくら』の「なかよし60週年記念版」が、先月27日から刊行開始したのです!!

『カードキャプターさくら 第1巻』と『なかよし60周年記念版 カードキャプターさくら 第1巻』
『カードキャプターさくら 第1巻』と『なかよし60周年記念版 カードキャプターさくら 第1巻』

写真の左側が一番メジャーな旧版、右側が60周年記念版です。旧版の全12巻を全9巻に再編集、カバーはCLAMP先生描き下ろし。装丁もとてもかわいらしいです。旧版のコミックスを揃えていたけど無くしてしまった……という人や、買おう買おうと思いつつ結局まだ買っていなかった……という人は、この機会に記念版の方を揃えてみるのも手かもしれませんよ?

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200年後の火星でも

レイ・ブラッドベリの名は知っていても、作品を読んだことはない、という人は案外多いのではないでしょうか。かくいう私もその一人だったのですが、これはいかんと思って高校3年生のとき受験勉強の合間に『10月はたそがれの国』を読んでみました。感想は、面白い、けどどうもピンと来ない、というもの。アメリカンジョークというか、あの独特の言い回しが少しとっつきにくかったのです……。それ以来、ブラッドベリからは遠ざかってしまっていました(今思うと、もったいないことをした……)。

時は移って大学1年生。萩尾望都の漫画を読みあさっていた私は、彼女がブラッドベリの大ファンであると知ります。そしてもう一度ブラッドベリを読んでみよう、という気になったところで、大学近くの書店に平積みされた本の帯が目に飛び込んできました。

「200年後の地球でも、きっと読まれる物語。」

バビロン行きの夜行列車 / レイ・ブラッドベリ / 角川春樹事務所 / 2014
バビロン行きの夜行列車 / レイ・ブラッドベリ / 角川春樹事務所 / 2014

その謳い文句のインパクト、そして表紙のデザインが気に入ったこともあって迷わず購入し、帰りの電車の中で一気読み。結果わかったことは、どうもブラッドベリの作品には自分の好みに合うものと合わないものが半々くらいであるらしいぞ、ということでした。

この『バビロン行きの夜行列車』でいうと、「分かれたる家」「目かくし運転」あたりはあまり好きになれなかったり面白さがいまいちわからなかったりしたのですが、「やあ、こんにちは、もういかないと」「窃盗犯」「夏の終わりに」「覚えてるかい? おれのこと」などはもう好みドンピシャを突いてきました。「夏の終わりに」なんかは脳内で萩尾望都の絵に変換して読むといい具合に余韻に浸ることができておすすめです。

ブラッドベリをまだ読んだことがない人にも、私のように別の作品を読んであまり気に入らなかったという人にも、もちろんブラッドベリファンにも、ぜひ読んでもらいたい一冊でした。

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音楽と人生と娘たち

一年ほど前、池袋のジュンク堂書店。話題の本コーナーに平積みにされていた多くの本の中、一際わたしの目を引いたのが『ピエタ』の文庫本でした。世界史の資料集で初めて見てから惹かれ続けているミケランジェロ作の像と、タイトルが同じだったからでしょうか。「ピエタ」はイタリア語で「哀れみ・慈悲」を表します。

ピエタ / 大島真寿美 / ポプラ社 / 2014
ピエタ / 大島真寿美 / ポプラ社 / 2014

この小説は、作曲家ヴィヴァルディに師事し、音楽と共に育った孤児の娘を主人公として、その娘に関わるさまざまな人々の人生を優しく描き出しながら進みます。文体は透き通って美しく、大きな事件などが起こるわけでもないのに読者をすっと物語に引き込んでゆくようです。ひとつひとつの言葉が丁寧に選びぬかれていて、深い余韻の残る締めといい、とても大切にしたくなる作品でした。

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萩尾望都の『愛の宝石』

大学の友人に、中野ブロードウェイが某夢の国より好きだという女性がいます。彼女と共に私もしばしば中野へ赴くのですが、この間ブロードウェイ内にある古書店でぶらりと一昔前の少女漫画コーナーを見て回っていたところ、萩尾望都の短編集を見つけました。とても装丁の美しい本で、うっかり一目惚れ。手にとってまっすぐレジへ。やっぱり書店はお財布の敵ですね……。

萩尾望都—愛の宝石— / 萩尾望都 / 小学館 / 2012
萩尾望都—愛の宝石— / 萩尾望都 / 小学館 / 2012

私が萩尾望都を知ったのは、その中野ブロードウェイ好きの友人に「店員Nは絶対に好きだと思う」と『ポーの一族』を勧められたことがきっかけでした。『ポーの一族』を読んだ時点で萩尾望都のセリフ回しや登場人物、世界観の魅力にとり憑かれ、続いて貸してもらった『アメリカン・パイ』でとどめを刺され……。

その後狂ったように萩尾作品を読み漁り、一生の宝物となるようないくつもの作品たちと出会うことができましたが、中でも五本の指に入るくらい好きなのが『ゴールデン・ライラック』。私が一目惚れして買った『萩尾望都—愛の宝石—』には、この『ゴールデン・ライラック』の冒頭がカラーで掲載されていて、もう感激でした。

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