ゴミ屋敷に住む独居老人。彼がなぜ他人を寄せつけず、ゴミを集めるようになったかが描かれた小説。
ゴミ屋敷のご近所さんの人間模様が描かれる1章、ゴミ屋敷の主人がなぜそうなってしまったのかを過去から辿る2章、そして主人が自分を取り戻しはじめる3章で展開されます。
いち凡庸な青年のいたって普通な人生が、戦後社会の変貌、価値観のゆらぎ、人間関係のトラブルなどの小さなつまづきから、少しずつしかし確実に歪んでいく様がスリリングでした。胸が痛くなりつつもページをめくらずにいられない面白さです。
固執というものは、一見それと関係がなさそうなところに因果があるかもしれません。ゴミ集めでなくても、自分の中の偏執的な部分を紐解くと、フタをしていた「理由」がきっと見えてきます。それを見つけること、見つめることはとても恐ろしいですが、私個人としても今後の人生の中でトライしていきたいことの一つです。自分自身を知ることや考えることを諦めて、生きることが「作業」になってしまわないように。