『薔薇の全貌』―世界を革命したアニメ、少女革命ウテナ


NHKが主催し、今年1月から3月にかけて投票が行われた「ベスト・アニメ100」。「TIGER & BUNNY」や「魔法少女まどか☆マギカ」、「おそ松さん」に「カードキャプターさくら」(店員N、思わずガッツポーズ)、「新世紀エヴァンゲリオン」等そうそうたる作品がランクインする中、1997年に放送され今でもカルト的人気を誇る「少女革命ウテナ」が30位につけました。

ヘルマン・ヘッセ『デミアン』の有名なフレーズやJ・A・シーザーの呪術的音楽、表現至上主義的な比喩的演出を取り入れたことによる独特の雰囲気をもち、一見いかにも「少女マンガ」的なキャラクター達が放つのは心の柔らかい部分に容赦なく切り込んでくるセリフの数々。人間の欲望を惜しみなく曝けだし、けれどもその根底にある愛を礼賛もする。2017年現在に至っても、色褪せぬ鮮烈さで人々を惹きつけてやまない「ウテナ」。

今回は、そんな「少女革命ウテナ」の公式ファンブック『薔薇の全貌』をご紹介しつつ、作品への個人的な思い入れを語ってゆきたいと思います。

少女革命ウテナ 薔薇の全貌 / AX特別編集 / ソニー・マガジンズ / 1999
少女革命ウテナ 薔薇の全貌 / AX特別編集 / ソニー・マガジンズ / 1999

残念ながら現在は絶版となっており入手困難な品なのですが、「ウテナ」の魅力が濃密すぎるほど詰まりに詰まっています。

『薔薇の全貌』の大部分は、上の数枚のようなカラーイラストと作中の印象的なフレーズを組み合わせたページが占めています。この本が発行されたのは1999年、今から20年近く前なわけですが、このデザイン性、この配置、この文字組!! これでは色褪せようもないよなあ、としみじみすることしきりです。フレーズにしても、「ウテナ」ファンは間違いなくこれ好きでしょう、というところを狙って抜粋されている感があって、数枚めくったところですでに「もう降参」という心持ちにさせられます。

半ばに袋とじのスタッフインタビューがあるのですが、この密度もまたすごい。スタッフごとに数ページ分しか収録されていないのに、この作品に対する思い入れ、なぜこんなアニメを作ろうと思い立ったのか、この作品を通してどんなことを伝えたかったのか、このシーンにはどんな思いを込めたのか、等、作り手へのインタビューというものに視聴者が求める内容はおおよそコンプリートされているように思います。作り手の思惑が「正解」かというと決してそうではないし、自分が作品と一対一で向き合ったときに受けた情動が何より大切ではあるのでしょうが、それはそれとして単純な興味は尽きませんから、スタッフインタビューはやはり抑えておきたくなりますよね。

〈黒薔薇編〉は「簡単すぎた」けれど合間にあの話がなかったら視聴者は付いてこられなかった気がするからまあよかったのかもしれない、というような芸術としての作品づくりと商売としてのそれとの間で生じる葛藤だとか、いろいろな裏話がされているのですが、わたしがとくに夢中になって読み込んだのは、キャラクターデザインとマンガ版を担当したさいとうちほさんへのインタビュー。

視聴者の快楽/登場人物の快楽の匙加減や「王子様はいないから、ひとりで生きていかなければならない」という作品全体のテーマのシビアさについて、伝統的に心情描写の多い少女マンガの作家独自の視点からコメントなさっていて、かなり読み応えがありました。

このあたりを読んでいてふと思い出されたのが、個人的にウテナ本編で一番印象に残っている、最後の決戦前、どう転んでも平穏なときに戻れはしないだろうとわかりきっている状況で、主人公ウテナと幹・樹里先輩がバドミントンをするシーン。そこはかとない不穏さが漂う中、それでも尚清々しい、あの光景。

振り返って考えてみると、あの場面は一方通行の想いが暴走することの多かった物語の終盤に、自分の打った球(相手に向けた想い)を正しく受けとめ返してくれる人がいるという幸福を示す役割を果たしていたのではないかと思います。

王子様コンプレックスを抱えていたウテナも、特定の人物への強い執着を持て余していたふたりも、序盤から終盤にかけてずっと歪みを抱えていたけれど、ウテナと決闘という形で信念をぶつけ合い、最後にはどこか吹っ切れたような様子でまっすぐに笑っている。「人はひとりで歩いてゆかなければならない」というテーマは紛れもなくシビアなものですが、この作品のデュエリストたちは、そうして掴み取った自分の道は清々しい幸福に満ちているのだという希望をも一緒に渡してくれるから突き放されたままではない。登場人物たちみんながみんな救いに辿りつけたわけではないというあたり、残酷なことは残酷ですが、ある意味そういった弱い人間の存在が目をそらされず許容されているともいえる。そんなところも、「ウテナ」の大きな魅力のひとつなのかもしれません。

余談ですが、ウテナは副題もはっとさせられるものが多くてじつにいいですよね……2話「誰がために薔薇は微笑む」、31話「彼女の悲劇」、そして最終話「いつか一緒に輝いて」あたりはこの短いフレーズを見ているだけでもうどきどきしてしまいます(その反動か、ギャグ回は奇天烈なタイトルばかりなのもキュート。ギャグにもいろいろ潜ませてくるので油断はできませんが)。

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