この間、大学の生協でミヒャエル・エンデ『モモ』の愛蔵版を見つけ、衝動的に購入してしまいました。装丁がとても凝っていて、デザインされた方のこの本への思い入れが伝わってくるような贅沢さ。すこしくすんだ赤と黄の色合いといい、外箱表紙の反転した懐中時計とその中心に据えられたカシオペイアといい、眺めているだけで『モモ』の世界観に浸れる出来栄えなのです!!
はじめて『モモ』を読んだのは(そのときは岩波少年文庫版でしたが)たしか小学校低学年の頃で、その独特の世界観に言いようもなく惹きこまれた覚えがあります。表面上は穏やかにしのび寄ってくる時間泥棒に怯え、変わってしまった友達へのモモの哀しみに同調し……。今でも効率重視的な考え方が苦手なのは、おそらくこの経験からきているのでしょう。
すこし前Twitterで、子どもの頃に読んでいた児童文学で創作の傾向がわかるというような説が話題になっていたようですが、それを聞いてわたしも、心のなかでひとりうんうんとうなずいてしまいました。なにせ、ぱっと思いつくだけでも、この『モモ』に、以前話題に挙げた『赤毛のアン』と『星の王子さま』、あさのあつこさんの『No.6』、ロシアの民話『森は生きている』……。『モモ』からは先ほど書いたように効率主義への苦手意識(もしかすると、カメを飼っていたのもカシオペイアへの愛着からかも? )、『赤毛のアン』からは夢見がちな性質、『星の王子さま』からは宝物のような言葉たち、『No.6』からは管理社会への不信感(による、ディストピアもの好き)、『森は生きている』からは自然への親しみと敬意、といった具合に、いっそ自分に呆れかえってしまうくらいストレートに影響を受けていることがわかってしまったものですから……。
雑誌『CREA』2月号で組まれていた「大人の少年少女文学」特集に巡り合ったりもして(ちなみにこの特集、「児童文学AtoZ」や作中に登場する食べ物のレシピなど盛りだくさん)、なんだか少女時代を懐かしむことの多い今日この頃です。みなさんも、子どもの頃に読みふけった本のことを思い返してみると、思わぬルーツを発見できるかもしれませんよ。ノスタルジーに駆られがちな夏に、風変わりで雄弁な履歴書を眺めてみませんか?
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