『星の王子さま』―麦畑の色


言わずと知れた名作中の名作、『星の王子さま』。「いちばんたいせつなことは、目に見えない」という言葉で有名なこの作品(の、続編)が、なんとアニメーション映画化され、現在全国の映画館で上映中のようです。

わたしは原作を愛するあまりメディアミックス作品については点が辛くなってしまうことが多いので、観にいくかどうかながいこと悩みこんでいました。ですが、公式サイトに載せられている監督の言葉にごまかしのない誠実さを感じたので、とりあえず一度は劇場に足をはこんでみます。

となるとやはり原作を読みかえしておきたくなり、小学生であったころに購入して、いまでは手垢にまみれている新潮文庫版『星の王子さま』を手にとりました。

星の王子さま / サン=テグジュペリ 訳・河野万里子 / 新潮社 / 2006
星の王子さま / サン=テグジュペリ 訳・河野万里子 / 新潮社 / 2006

一介の読者にすぎない身でなんだか偉そうな、しかもありきたりなことを言っているぞ、と思われてしまうかもしれませんが、やはりすばらしい作品、人のこころに褪せない印象をあたえる作品というものは、読みかえすたびにあらたな発見をさせてくれるものを指すのではないでしょうか。

ずいぶんな昔に遠出をしたさきの本屋さんでみつけ、帰り道で夢中になってページをめくってから、もう何度読んだのかわかりませんが、そのたび「ここもいいなあ」「さりげなく、こんなにすてきな表現がされていたのか」と驚かされます。

それでもやはり、はじめからずっと変わらずに好きな箇所というものはあって、わたしにとってのそれは、王子さまとキツネの別れのシーン。離ればなれになるときに悲しみにくれるくらいなら、そもそも仲よくなんてならなければよかったじゃないか、さいごに泣いてしなうなら、いいことなんてなかったじゃないか、ということを言う王子さまに対して告げた、キツネの言葉。

「あったよ」「麦畑の色だ」

この言葉には、王子さまとキツネが出会ったときに、キツネの言った、「きみは、金色の髪をしている。[…]金色に輝く小麦を見ただけで、ぼくはきみを思い出すようになる。麦畑をわたっていく風の音まで、好きになる……」という言葉が踏まえられています。

出会いの言葉が、別れの言葉につながってゆく。ともに過ごした記憶が、萩尾望都(『ゴールデン・ライラック』)いわくの〈らくだの水〉、メリー・ポピンズにでてくるバートいわくの〈子どものころのやさしい思い出〉のように、それぞれを形づくり、生かしつづけるものとなってくれる。それは、なんて幸せなことでしょう。

あんなにも美しいことばで、その幸福をつたえてくれる『星の王子さま』への愛しさが、日々募ります。観ると決めたはいいけれど、その分やはりすこし、映画怖いなあ……。

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