『赤毛のアン』の名は、読んだことはないとしても、多くの人々の知るところだと思います。すこし前(調べてみたら、2014年上半期でした……時の経つのは速いものです)に、NHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』が放送され高い人気を博したこともあり、書店に平積みされているのを見る機会も増えました。
カナダの作家モンゴメリの手になるこの小説、そして主人公であるアンは、1908年に初版が出版されてからというもの、絶えることなく世界中の人々に愛されてきました。グリン・ゲイブルス(緑の切妻屋根)とよばれる屋敷に住むクスバート老兄妹が少女アンを引き取るところから物語は始まり、アンの豊かで繊細、どこまでも伸びやかな感性による美しい想像に彩られた少女時代が描かれてゆきます。
真白い花の咲き乱れる並木道を見ては〈歓喜の白路〉と名付け、小さな池を見れば〈輝く湖水〉と称し……アンを包む世界はどこまでも鮮やかです。しかしその並木道も池も、他の人々にとってはただいつも通りすぎてゆく景色の一部。彼女の世界が美しいのは、彼女が何気ない美しさというものに気が付き、そこに持ち前の想像力でさらなる輝きをあたえるため、つまり、彼女の世界を美しくしているのは彼女自身なのです。
この作品を読んでそれに気がついた時、わたしは目から鱗が落ちる気分を味わったものです。アンにかかれば、わたしが毎日学校へ通う単調な通学路も、きらめくような夢の小路へと早変わりしてしまうに違いない、それはどんなに得難く素晴らしい才能だろう、と。少女であったわたしはそれから、アンを追いかけて日常のささやかな夢を追う日々を過ごしました。彼女のおかげで、わたしの少女時代は喜びと驚きに溢れていたと、今でもそう思っています。
まさに今、人生いちどの少女時代を駆け抜けている少女たち、そして彼女らの娘さん達にも、この本が読み継がれてゆきますように、と願うばかりです。
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