石川啄木というと、あの有名な「働けど働けど~」という短歌のイメージがやはり強いのではないかと思います。もちろんあの歌も素晴らしいのですが、あれはどちらかと言えば大人になってから共感できるようになる歌。はじめて啄木に接した小学生や中学生時代、どこかとっつきにくく感じ、そのまま啄木から離れてしまった人もいるのではないでしょうか(と、いうか私がそうだったのですが…… )。
しかし、啄木を食わず嫌いしてしまうのは勿体ない!! じつは、彼の作品は「青春の賛歌」とも称され、恋の歌なんかもたくさん歌っているのです。
「眼とぢて立つや地なる骸の世辿る暫しの瞬きよ恋」や、「いつはりて君を恋しといひけるといつはりて見ぬ人の泣く日に」。「はなやかに物いふ人も手をとれば仄にうつむくをかしき夕べ」は情景がふっと目に浮かぶようですし、「人ひとり得るにすぎざることをもて大願とするあやまちは好し」なんて、とても粋ですよね。
私が一番好きなのは、「春の日は今日ゆかむとす君を見てわれ落涙す故を知らずも」なのですが、恋の歌ととっても、そうでなくても、しんと沁みわたる儚く美しい歌だと思っています。
啄木は暗いし難しそう……という先入観を取り払って歌集をめくってみると、きっとお気に入りの一首に出会えることでしょう。
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