『赤毛のアン』―輝かしい少女時代の思い出

『赤毛のアン』の名は、読んだことはないとしても、多くの人々の知るところだと思います。すこし前(調べてみたら、2014年上半期でした……時の経つのは速いものです)に、NHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』が放送され高い人気を博したこともあり、書店に平積みされているのを見る機会も増えました。

赤毛のアン / モンゴメリ / 新潮社 / 2008
赤毛のアン / モンゴメリ / 新潮社 / 2008

カナダの作家モンゴメリの手になるこの小説、そして主人公であるアンは、1908年に初版が出版されてからというもの、絶えることなく世界中の人々に愛されてきました。グリン・ゲイブルス(緑の切妻屋根)とよばれる屋敷に住むクスバート老兄妹が少女アンを引き取るところから物語は始まり、アンの豊かで繊細、どこまでも伸びやかな感性による美しい想像に彩られた少女時代が描かれてゆきます。

真白い花の咲き乱れる並木道を見ては〈歓喜の白路〉と名付け、小さな池を見れば〈輝く湖水〉と称し……アンを包む世界はどこまでも鮮やかです。しかしその並木道も池も、他の人々にとってはただいつも通りすぎてゆく景色の一部。彼女の世界が美しいのは、彼女が何気ない美しさというものに気が付き、そこに持ち前の想像力でさらなる輝きをあたえるため、つまり、彼女の世界を美しくしているのは彼女自身なのです。

この作品を読んでそれに気がついた時、わたしは目から鱗が落ちる気分を味わったものです。アンにかかれば、わたしが毎日学校へ通う単調な通学路も、きらめくような夢の小路へと早変わりしてしまうに違いない、それはどんなに得難く素晴らしい才能だろう、と。少女であったわたしはそれから、アンを追いかけて日常のささやかな夢を追う日々を過ごしました。彼女のおかげで、わたしの少女時代は喜びと驚きに溢れていたと、今でもそう思っています。

まさに今、人生いちどの少女時代を駆け抜けている少女たち、そして彼女らの娘さん達にも、この本が読み継がれてゆきますように、と願うばかりです。

当店では、児童文学や少女小説の買い取り大歓迎です。出張買取も承りますので、お気軽にお問い合わせください

テンプル・グランディン著『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』

この本は自閉症の動物学者がその独特な感覚をもって研究した事が書かれています。著者の自閉症であるがゆえに持っている普通の人とは違う感覚が、動物の持っている感覚に近いらしいということを使って動物の目で見える世界を解説しています。ペットなどが喜んでいたり怒っているといった感情は分かりますが、どんなことを感じているかは分からないのでとても興味深い一冊です。

動物感覚 アニマル・マインドを読み解く / テンプル・グランディン / NHK出版 / 2006
動物感覚 アニマル・マインドを読み解く / テンプル・グランディン / NHK出版 / 2006

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『思い出を切りぬくとき』―若き日の萩尾望都

萩尾望都先生の漫画については、数ヶ月前の記事で語らせていただきましたが、今回は彼女のエッセイ集である『思い出を切りぬくとき』を紹介したいと思います。

思い出を切りぬくとき / 萩尾望都 / 河出書房新社 / 2009
思い出を切りぬくとき / 萩尾望都 / 河出書房新社 / 2009

この本は萩尾先生のデビュー40周年を記念して出版されたもので、彼女が20代の頃に書いたエッセイが多数収録されています。

漫画家や小説家のエッセイを読むといつも、本人や周囲の人間のキャラも、会話の内容も、生活の密度も、濃いなぁ……と思うのですが、萩尾先生もやはりなかなかのものでした。わたしの中の「周囲の人間のキャラが濃い作家ランキング」は、近所の神社からリアカーで狛犬を盗み出した友人がいるという桜庭一樹が1位の座を譲らないのですが、「充実した素敵な日々を送っている作家ランキング」では萩尾望都がトップに躍り出ました。

「まずあなた自身の感性をね、豊かにしたほうがいいと思うのね、もっと楽しんで、遊んで、本読んだり、バレエ見たり、音楽とか……」というのは、「人の往来」というエッセイの中で、いろいろな「楽しみ」をただ漫画の材料にしようとして空回りしている漫画家志望者を相手に彼女が発した言葉です。この本を読むかぎり、彼女の生活はまさにその言葉のとおりで、時にはバレエを、時には能を、どこまでも素直に楽しんでいます。そこにいるのはただ純粋なひとりのファン。しかし彼女の作品を読むと、それらを鑑賞したことで彼女自身の感性がより豊かになり、結果として作品が生き生きと美しいものになっていることが感じとれるのです。自然な流れとして、ひとりのファンとしての萩尾望都が、漫画家としての萩尾望都の糧となっている。まさに「創作は遊びとムダから生まれる」ということですね(本書p.52)。

また、このエッセイ集には読んで思わず「えっ」と声を漏らしてしまうようなエピソードも載っています。あの『トーマの心臓』がもうすこしで打ち切りになるところだった話だとか……本当に肝が冷えます。

若き日の萩尾先生のありのままの姿を垣間見ることができて、萩尾ファンとしては大満足の1冊でした。

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小沢真理『銀のスプーン』

『銀のスプーン』は今、放送中のドラマ『明日もきっと、おいしいご飯〜銀のスプーン〜』の原作漫画です。父親を亡くし、母親も入院してしまった高校生の兄が双子の弟妹の為に四苦八苦しながら料理をしたりと世話をしていく家族の物語です。ほのぼのとした漫画ですが、いじめや病気などの現実問題も描かれています。読むと家族っていいなと思わせてくれる漫画です。

銀のスプーン / 小沢真理 / 講談社
銀のスプーン / 小沢真理 / 講談社

小沢真理さんの作品はどの漫画も雰囲気がいいですね〜。『世界でいちばん優しい音楽』や『ニコニコ日記』もお勧めです。

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講談社文芸文庫

「講談社文芸文庫」は純文学や随筆やエッセイなどの名作がたくさん刊行されている講談社の書籍シリーズです。絶版になっていた作品がこのシリーズで復刊されていることも多いですね。そしてカバーのデザインがお洒落で格調高く感じさせます。パステルカラーの表紙にメッキによるタイトル文字がいいですね〜。定価が高めなのですが、このシリーズから名作文学に触れてみるのもいいかもしれません!

講談社文芸文庫
講談社文芸文庫

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