エンデのメモ箱、宝箱


ミヒャエル・エンデ。子どものころに、図書館や学校の図書室に繰りかえし足をはこばれた方には、とても懐かしく思いだされる名であろうと思います。あの分厚い『はてしない物語』を、時間をわすれて読みふけったりしませんでした?

『はてしない物語』や『モモ』の作者として、本好きな子どもたちのまえに現れる彼には、書斎においた箱に演劇の入場券や請求書といったものから小説の書きだし、ながい論文にいたるまで、さまざまな紙をつっこんでおく癖があったそうです。

今回紹介させていただく『エンデのメモ箱』は、そんな彼の作品のファンにとっては宝箱のような箱のなかから選りすぐった、メモや創作ノート、詩や批評、インタビューや手紙などとっておきの短編を1冊にまとめたもの。エンデがいかに多様な方面に興味関心を抱いていたか、そしてそれがどのように彼の作品に反映されているか、読者にしみじみと感じさせる、そんな本です。

エンデのメモ箱 / ミヒャエル・エンデ 訳・田村都志夫 / 岩波書店 / 2013
エンデのメモ箱 / ミヒャエル・エンデ 訳・田村都志夫 / 岩波書店 / 2013

ざっと目次に目を通してみても、「愛読者への四十四の問い」「亀」「芸術界の天才志望者への助言」「魔法使いの弟子のみなさんに警告」「永遠に幼きものについて」「世界を説明しようとする者への手紙」などなど、タイトルだけで興味をかきたてるものばかり。どれも一筋縄ではいかず、それぞれにエンデの洞察力やユーモア、そして優しくて意地悪なグロテスクさがうかがわれます。

個人的にとくに印象深かったのは、さきに挙げた「愛読者への四十四の問い」。天使や悪魔や奇跡について聖書は語りますが、それでは聖書はファンタジー文学に属するのでしょうか?  、詩を“理解した”というとき、それはどのようなことなのでしょうか? といった調子で、タイトル通り四十四の問いが並べられたものです。ひとつの問いをかけられるたびにどこかぎくっとしてしまい、その緊張が最後の問いでほぐされると同時に「してやられた!! 」と叫びたくなります。どんな問いかは、読んでみてのお楽しみ。

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