テレビドラマにもなった『書店ガール』の著者、碧野圭さんの最新作です。すっかり碧野さんにハマってしまったので待っていた1冊でした。
舞台は、昭和モダンな木造家屋を改装したレストラン『菜の花食堂』で月に2度開講されている料理教室。オーナーシェフの靖子さんは、普段はおっとりといつも柔らかな微笑みを絶やさない年配の女性ですが、料理教室に集まる生徒さんたちに起こる日常の小さな「事件」を、時に美味しい料理を通じつつ独特の鋭い観察眼で解決していきます。
物語の進行役はアシスタント兼生徒でもある派遣社員の20代女性。その彼女から見た靖子先生が何ともチャーミングで素敵なんです。何でも受け入れてくれるあたたかさと懐の広さがあって、まるで菩薩のようなひとです笑。物語の進行役の女性が抱えてた過去の傷が段々と明らかになっていくのですが、彼女に靖子先生と菜の花食堂との出逢いがあってよかったなあとフィクションとは分かっていても心から思わずにいられませんでした。そんな先生自身が抱えている事情も終盤に向けて判明していきます。靖子先生は1日にして成らず、です。
生徒さんそれぞれ抱えている問題が題名のような「ささやかな」とは言えないような人生を左右するような事情だったりもするので、ともすれば重くなりがちですが、全体に流れる空気は表紙カバーのイメージそのものにほっこりあたたかです。
店員Kは読んだ後しばらく立ち直れないようなずっしりくる重厚感のあるストーリーも好きなのですが、やはりほっとできるお話は個人的に絶対必要です。もしかしたら無意識にずっしり系と交互に読んでるかもしれません。ということはお次はずっしりか……笑。